難病嚥下研究会の発足に寄せて
国立精神・神経医療研究センター病院脳神経内科
難病嚥下研究会世話人
山本敏之
近年,我が国では摂食嚥下障害の診療に対する関心が高まり,嚥下造影検査や嚥下内視鏡などを使った診断技術が飛躍的に向上しました.また,摂食嚥下リハビリテーションや外科的治療など,治療の選択肢も増えました.しかしながら,いまだ十分な成果が上がっていないのが,神経変性疾患や筋疾患に代表される「難病」の摂食嚥下障害の分野だと思います.
「難病」とは,発病の機構が明らかでなく,治療方法が確立していない希少な疾病で,長期の療養を必要とするものと定義されます(平成27年1月27日 厚生労働省 指定難病検討委員会).難病の中には運動障害が現れる疾患が多く,しばしば嚥下も障害されます.難病の嚥下障害は,現在の医学レベルでは治すことが難しい分野の一つです.難病の摂食嚥下障害に携わる医療者が「どうすればいいのか?」を考えるため,2015年に脳神経内科医,耳鼻咽喉科医,歯科医の有志で,この難病嚥下研究会を発足しました.
難病の摂食嚥下障害の診療を発展させ,これからの医療に役立てていくことが,本研究会の趣旨です.少しでも多くの医療者が,この研究会に関わり,難病患者の摂食嚥下障害にできることを探して欲しいと思います.
2016年1月7日